004 [コラム] 盆と正月、月とすっぽん。

 「さぁて、来週のサザエさんは...」で始まる名調子。偶然に見た次週の予告内容が、「父さんネギを買う」「ボクは赤ちゃん」「もてるマスオさん」の3本だった。改めて3本立てはイイなあと思う。序破急というか、守破離というか、スリーアミーゴスというか。とにかく3者の関係性が絶妙だと、これにまさる快感はない。
 映画の世界も、かつては2本立て、3本立てが当たり前だった。たとえば、自分が生まれた1975年の映画館を調べてみると、東映なら『新幹線大爆破』『ずうとるび 前進!前進!大前進!』や、『極道社長』『東京ふんどし芸者』の2本立て、あるいは「東宝チャンピオンまつり」にいたっては『メカゴジラの逆襲』『アグネスからの贈りもの』『アルプスの少女ハイジ』『はじめ人間ギャートルズ』『新八犬伝』『サザエさん』の6本立て! 当時のポスターには、「ぼくらのアイドルが勢ぞろいしたスゴーイ6本立だ!」と謳われているけど、ゴジラからアグネス・チャンまでを「アイドル」と言われても、あまりに大雑把すぎて全然スゴイとは思えない。
 よくも悪くも幕の内弁当という言葉がある。先の「東宝チャンピオンまつり」6本立てに驚きやハーモニーがあるか。これはダメな幕の内弁当に違いない。盛ればいいってわけじゃない。改めて、「父さんネギを買う」「ボクは赤ちゃん」「もてるマスオさん」の美しい三角形を味わいたい。うん、ナイス幕の内だ。もしかしたらナイス側の喩えが感覚的で、あまり説得力がない気もしてきたので、他にも好印象な〇〇と〇〇(と〇〇と〇〇と...)を考えてみたい。
 「老人と海」「夜と霧」「点と線」「灰とダイアモンド」「月と六ペンス」「ヒゲとボイン」「セーラー服と機関銃」「豚と軍艦」「セックスと嘘とビデオテープ」「動くな、死ね、甦れ!」「コップとコッペパンとペン」「乳と卵」「月と菓子パン」「オツベルと象」「イカとクジラ」「趣味と実益」「ぱんとたまねぎ」...今も昔も名タイトルには、その言葉だけで物語が動き出しそうな気配が漂っている。
 原爆オナニーズ、突然段ボール、空手バカボン、暴力温泉芸者、面影ラッキーホール、在日ファンク、切腹ピストルズ...バンドの名前には有無を言わせない、強引な説得力がある。ここでは助詞の「と」ですら、まどろっこしい。
 最近だと、雑誌『フリースタイル15号』「はじめての対話」特集に掲載された、小室哲哉と小西康陽の対談とか。制服アイドルと原発問題が出会った、制服向上委員会の新曲「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」とか。
 いかにAとBの関係性から絶妙なマリアージュを生み出すか。このAとBのあいだに編集=EDITの技があるわけで、今年度から新たに始まったBY EDITでは、様々なAとBの距離を測りながら進めている。



竹内厚 / Atsushi Takeuchi (バイエディット・ディレクター)

神戸大学文学部卒業。2000年より情報誌Lマガジン編集室に勤務して、「美術館特集」「京都市左京区特集」「動物園特集」などを担当。09年末、雑誌休刊にともない退社。現在は「写真とことばでニッポンのあたらしいふつうを提案する」を掲げるRe:S(りす)に所属。その他、聖地探訪ユニットfernichとしての活動なども。

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