001 [コラム] アートとデザイン:リサーチをすることについて
アートとデザインの領域には実に様々な手法の考え方や研究体系が存在していて、それは制作と無関係ではいられない:それはとても面白い事であるし、重要な事でもあると思っています。たとえ直観で制作をしているとしても、直観とは何かを調べることも可能です。「直観的に作れなくなるから直観は何かとも考えない」という姿勢では、何も考えていないこととほぼ同義です。つまり、メタレベルで自分が制作しようとしていることを理解することがとても重要であり、この意味においてリサーチとは直観を殺さず、むしろより多くの直観的理解を促す機会をつくることなのです。 一般的にアーティストやデザイナーが思考することは危険であり、衒学的になることは作品の美しさをないがしろにしてしまう、というような風潮があるように感じられます。つまり、作品で表現することをしゃべってしまっては作品の存在意義がない、というわけです。
しかしながら、作品制作のことをリサーチし、思考することは作品自体を説明することではないと思うのです。リサーチとは「作品をつくるにあたり、自分自身はどのように歴史や社会など、自分をとりまく様々な事象をとらえているのか」、ということを見つめる機会なのです。「仮説を実験を通して立証する」という従来の科学的リサーチではなく、より大きな観点から「思考」することが本質的なリサーチのあり方だと捉えることが必要ではないでしょうか。
リサーチの重要性をかんがえるにあたり、Inter-Disciplinary Perspectiveという視点があります。この言葉は日本語でいえばジャンル横断、とでもいえましょうか。芸術でいえばファッションやグラフィックデザインなどの方法論が絵画に、プロダクトデザインが建築に、テキスタイルデザインがインダストリアルデザインに持ち込まれる、といった具合です。今日軽やかにジャンルの横断をし始めたアーティストやデザイナーがいるのは、決して単体としてのジャンルが「ネタ切れ」になったからではなく、関係をもたずにはいられない社会的状況があるからだと思います。そして、このような時代だからこそ逆説的に、自らをよく考える事、つまり自分を取り巻く環境、歴史、社会、文化その他の文脈を複合的にリサーチすることが重要であるということもできるのではないでしょうか。
ロラン・バルトは、「イメージは多様な解釈を可能とするが、言葉は的確に、しかし1つの固定されたイメージしか生むことができない」ということを「モードの体系」で記述しています。だからといって、具体的な思考と抽象的な思考を結びつける道筋としてのコトバによる思考を、先人たちが様々な形で試みた知の愉しみとしてのリサーチを、忘れてはいけないと思うのです。クリティカルデザインラボにおけるリサーチの重要性とは、このような観点に立脚したものであると考えています。
水野大二郎 (クリティカルデザインラボ担当) 東京都出身。18歳で渡英後、シェリー・フォックスデザイン事務所にて非常勤デザインアシスタント(2000-2003)。2003年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)ファッションデザイン修士課程修了。2008年RCAにてファッションデザイン博士号取得。ファッションデザインの研究およびデザインを手がけ、現在はケータイとファッション、ユニバーサルデザインとファッションを研究中。2006年より京都造形芸術大学空間演出デザイン学科ファッションデザインコース非常勤講師及び成安造形大学ファッションデザインコース非常勤講師。










